開業直後の「ひよこ狩り」に注意!

「皆さま、開業おめでとうございます!」そんな言葉に出会ったら、まず一呼吸おきましょう。

士業の業界における“ひよこ狩り”という言葉を聞いたことはありますか?もちろん、実際のひよこを狩るなんて恐ろしい話しではありません。新規開業の不安につけ込み「仕事が取れる」「顧客を紹介する」などの甘言で経営サポートの高額契約を迫る手口の総称です。

「ひよこ」なんて、なんとも失礼なネーミングです。しかし開業直後は実績が乏しく、意思決定が揺らぎやすい時期です。思った以上に狩られてしまう人がいるからこそ、そういった手口が減らないのも事実です。

今回は、そんなひよこ狩り業者に引っかからないための注意点や、比較的安全な業者の見分け方などをご紹介していきます。

狙われやすいタイミングと背景

士業と言っても業種や勤務形体も様々ですが、どの士業でも共通して独立直後は案件が不足し、不安が最大化するため標的になりやすいです。

士業の種類によっては求人が少なく、合格直後から即開業という選択をする方もいるでしょう。そういった場合は実務ノウハウや案件をなんとかして補いたくなり、「成功実績○○%」「まだやっていないのはリスクです」「成功の近道」といった言葉にグッと来てしまいがちです。

ですが、これらの言葉はひよこ狩りでも良く使われる言葉!甘い罠かもしれません。

士業は、社会的な需要が必ずあるという側面を持っています。資格を取った時点であなたの実力は本物です。ですので、自信を持ってひとつずつ地道に進めるのが一番の近道です。

注意!よくある手口

次に、ひよこ狩りによくある手口をいくつか紹介します。先にお伝えしておくと、どの手口でも共通して多いのが“まとまった支払い×実態の薄い約束”という点です。それを踏まえたうえで、改めて具体的な手口を確認してみましょう。

案件紹介商法

「顧問先を紹介します」と称し登録料や月額費を請求してくる場合です。もし成果報酬と記載されている場合でも「契約の獲得ではなく連絡先の提示だけ」などという条件が指定されているなんてこともあるため注意が必要です。

また、その営業方法も「ご登録は無料、ご相談いただいた方には1000円キャッシュバック」などの極端なキャンペーンで顧客から連絡先を獲得しているだけだったり、テレアポなどの事務所のイメージが低下する手法だったり、という場合もあるので注意です。


広告代行

「今すぐ集客」「上位表示」を強調し、高額契約を求めます。実際のところ、広告自体は悪い手法というわけでもなく、メジャーなサービスであれば一番効率的に多くの方にアプローチできるというメリットもあります。しかし覚えておいて欲しいことは、広告は「どのように顧客に価値を感じてもらうか」という戦略があって、はじめて真の効果を発揮するということです。

例えば、その広告でなにかしらの顧客の興味を引くことが出来なければ、クリック率は極端に低下します。さらに、クリックした先のWebサイトで「これは魅力的なサービスだ!」という価値を顧客に伝えられない場合、問い合わせ率はさらに低下します。問い合わせを1人獲得するのに数千人の広告視聴が必要なんてこともあり得ます。

ですので、Webサイトを見てくれた人から問い合わせがくるという実感があり、そのうえで興味をそそられる広告戦略を用意して、それから広告を利用することをおすすめします。


情報商材・セミナー商法

「これだけ受講すれば顧客獲得」と煽り、契約を求めます。ふたをあけたら個別での戦略設計はフレームワークの説明程度、あとはWeb動画へのアクセス権があるだけで、費用が数十万に及ぶこともあります。いまの時代は基本的な事を学ぼうと思えば安価、場合によっては無料でも提供されています。類似するコンテンツが無いか確認してみることをおすすめします。

さらに、「誰にでも当てはまる情報」を学んだ先に出来上がるのは、同じものを提供する変化のない会社です。仮にA社とB社が全く同じ物を提供していれば、顧客はどっちを選んだっていいわけです。

顧客に選ばれるということは、「違い」を選ばれるということです。ですので顧客獲得を考えるのであれば、あなたと向き合い、あなたの「違い」を考えてくれる人にサポートしていただくことが重要です。

こうして見抜け!4つのチェックポイント

じゃあ、開業直後をターゲットにしていたら全部が全部悪い企業なの?と言えば、そんなこともありません。もちろん正しい知識で価値を提供してくれる事業もあります。ですが、何を基準にしていいのか?いまいちわからないですよね。

そこで、ひよこ狩りを見抜くための、4つのチェックポイントをご紹介します。あやしいな?と思ったら、ためしに確認してみてください。

  1. 過剰な将来像をうたっている
    例えば「今すぐ顧問先を獲得」「年間100件紹介」など、短期間で大袈裟なリターンをうたっているような場合は当然ながら注意が必要です。

    優良な事業の場合は「すぐに大きな結果を約束するものではない」という不都合な真実を隠すことはありません。そのうえで自社のサービスがあなたにとってどのような効果があるのか、どの様な手順になるのか、丁寧に説明してくれます。

  2. 時間的な制約のあるキャンペーン
    「この問い合わせで契約してくれた場合に限り」や「最初の数人限り」などといった、損をするかもという気持ちを煽って急ぎの年間契約や入会金の即決を迫る場合も注意が必要です。

    確かに限定的な募集をおこないたいという場合もあるでしょうが、そこには「来月が決算なのでセール中」や「先月立ち上げたサービスのモニター募集」といった理由があります。優良な事業であれば、なぜ、いつまでといった募集の背景を明確に説明してくれます。そういった詳細な説明をはぐらかす場合は特に注意です!

    さらに、短期でのトライアルが可能な場合が多く、解除・返金の条件も明確です。
    この辺りも忘れることの無いように確認していただきたい要件です。

  3. 実態の薄さ
    「1万件の成功実績」「顧客満足度90%」といった曖昧な実績も、ひよこ狩り業者に都合のいい解釈で宣伝している場合が多いです。優良な事業であれば、クライアントに許諾済みの事例を提示していたり、何年度のどのエリアでの実績か明記している、などの詳細な情報を提示してくれます。
  4. 人として信頼できるか
    ここまで来てこれかよ!と思うかもしれませんが、実は最大のポイントです!ひよこ狩りの事業者は心理的に相手を揺さぶるセールス手段を熟知しています。広告や資料だけを見て判断せず、必ず話しをしてみてください。

    ただし、初回から相手の会社での打ち合わせや集団セミナーでの打ち合わせは心理的な圧力が増加するので、注意が必要です。また、話をした後は時間をおいて冷静になってから判断していただけると安心です。

どんな事業やサービスでも完璧はありません。あなたに成功を!とはいうものの、至らない部分は必ずあります。利益を求める部分も必ずあります。それでも、あなたのために一生懸命になってくれるかどうかが重要です。耳障りのいい言葉だけ並べたり、あなたの不安を煽ったり、そういう人にあなたの未来を任せることはお勧めできません。


まとめ 「ひよこ」ではなく「先生」である

いかがだったでしょうか。開業直後を狙うとは。許せん、ひよこ狩り。

ですが、正直に言います。ロクイチクリエイションズでは「地域のベテラン勢にも勝っていこう」というテーマを掲げておりますので、新規開業をしている方のご相談は歓迎しております。ということは、ひよこ狩りだったのか!?

いえいえ、もちろん開業直後をサポートさせていただく企業の全てがひよこ狩りというわけではありません。少なくとも、私の場合はみなさんのことを「ひよこ」と思うことはありません。

自分自身、事業を経営していくにあたり士業の皆さんに専門的な業務のご依頼させていただくことはもちろんあります。資格の無い自分からすればみなさんはどんな状況であれ頼りになる「先生」なのです。

業界では先輩が新人に向かって「先生」といじって声をかけることもあるようで、この呼び方に抵抗を持たれる方もいると聞きます。しかし、顧客からすれば開業直後であろうが、間違いなく尊敬をこめての「先生」です。これからも、私も頼りにさせていただきます!

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