なぜあの事務所が選ばれるのか? 顧客目線で見る差別化の答え
「うちの事務所には、これといった強みがない。競合に勝てる特徴が欲しい…」
こんな風に感じている弁護士・税理士・司法書士の先生は、きっと少なくありません。
確かに他事務所にはない専門性や独自の実績は強力です。そのために、新しい資格を取り、質の高いサービスを作ろうと工夫する方も多いでしょう。
それにもかかわらず、問い合わせが増えないと悩む声は珍しくありません。それはなぜでしょうか?
実は、サービスの品質は今あるもので十分にニーズを満たしていることが多く、独自性の捉え方の問題で顧客にとって魅力的なサービスに仕上がらないケースが多く見受けられます。では顧客は何を基準に依頼先を選ぶのでしょうか。
このコラムでは、そんな独自性をテーマに解説していきます。
プロ目線だと失敗する?
これはどの業界でも共通していますが、その世界で経験を重ねた専門家の方は、どうしても同じプロ同士を意識して差別化できないか考えてしまいがちです。他事務所に負けないようにもっと技術や経験を重ねなければ顧客は選んでくれないと考える方も少なくないですが、実は顧客にはその凄さが伝わりにくいのです。
なぜかというと、顧客はプロのような知識や経験を持っていないからです。法律や税務の説明を聞いても「へぇ、すごそう!」と思うだけで、それが何なのかはよくわからないし、自分にどう役立つのかまでは想像できません。
結果的に、プロから見たら明らかに能力差がある状態でも、顧客からしたら「どの先生も同じくらいすごそうだな」と感じてしまうのです。
もちろん、先生方の努力が無駄になるわけではありません。ただ「顧客はそこまで深く理解できない」というギャップがあるということです。だからこそ、資格やサービスは、専門用語のままではなく「誰でもわかる言葉」に置き換えて伝える必要があるんですね。
そして面白いのは、顧客はとてもシンプルなことでも大きな価値を感じてくれるということです。たとえば「書類の書き方を丁寧に教えてくれる」「専門用語をわかりやすく説明してくれる」という様な事でも価値になります。
先生にとっては手間もなく、こんなこと誰でもできるんじゃないの?と感じることでも、顧客にとってできないことは「専門的な事で助けてもらえた」という大きな安心につながるのです。
コンビニアイスで考える「小さな違いの価値」
では、顧客にとっての「小さな違い」がどれほど大きいか、身近な例で考えてみましょう。
ある日、あなたが「コンビニ限定アイス」を食べたいと思ったとします。家の近くには同じ系列のA店とB店があり、商品も値段もまったく同じ。さて、あなたなら何を基準にコンビニを選びますか?
おそらく「家から近い」「レジが混んでいない」「店員さんが感じよい」――そんなことで選ぶのではないでしょうか。顧客が事務所を選ぶときも同じです。
業界的には大した差に見えなくても、顧客にとっては「相談しやすい立地」「電話がすぐにつながる」「説明がかみ砕かれていて理解しやすい」といった要素が、決め手になるのです。こうした“小さな違い”を大切にすることが、実はとても大きな差別化になるんです。
顧客の「不満や要望」こそ差別化のヒント
「なるほど、小さな違いが大事なのはわかった。でも、それって他の事務所にもすぐ真似されそうじゃない?」そう思う方もいるかもしれません。確かに、もう少し真似されにくい、ユニークな差別化も欲しいところです。
そんな時は、顧客が抱えている「不満」や「要望」に耳を傾けてみましょう。そこにこそ、ユニークな差別化のヒントがあります。たとえば――
- 「不動産の相談で、マンションに詳しい先生は多いけど、農地のような田舎の土地に強い専門家は少ない」
- 「離婚相談をしたいけれど、小さい子どもを連れて行ける環境がなくて困っている。あまりこんな話も聞かれたくない。」
という様な、業界自体に対する不満や要望です。こうした声を拾えたら、それだけで大きな強みになる可能性があります。例えばあなたに「農地整備に携わった経験があります」「事務所にキッズスペースを設けています」という事実があれば、それを伝えるだけで顧客にとっては安心して相談できる理由になりますよね。
こんなことで?と思うかもしれませんが、そんなことだと思うからプロは口に出さないのです。くり返しますが、顧客に選ばれるうえで重要な事はプロ目線よりも顧客目線です。
高度な専門性「だけ」では伝わらない
もちろん、AIを使った分析や希少な資格など、業界内で注目される専門性も大きな価値であり、差別化です。ただし、それをそのまま打ち出しても、顧客にはやはり難しすぎてピンとこないことが多いのです。ここで大事なことは、顧客にとって「それが自分にどう役立つのか」を伝えることです。
たとえば「AIを活用した判例データ分析」と言うと、顧客も何か凄そうだぞ?とは感じてくれますが、自分にとってどう役立つのかイメージしにくいです。これを「10分であなたの相談内容に近い過去の事例を探せます」と伝えると、時間をかけずに役立つ情報がもらえそう!と自分にとっての価値をイメージしてくれます。
まとめ ―プロ目線ではなく顧客目線だからこそ選ばれる
顧客に選ばれる事務所の強みは「プロの目線」だけでは測りにくい理由、感じていただけたでしょうか。
弁護士・税理士・司法書士などの士業に共通していえることは、その資格を有した時点で顧客にとってはどの人も同じ「凄い専門家」だということです。自分が他の専門家とどう違うのかは、小さくてもわかりやすく伝えることが重要です。
その小さな違いこそが、結果として大きな差別化になり、集客や成約につながっていきます。ぜひ、顧客の声に耳を傾けながら、自社ならではの強みを見つけてみてください。
また、もし顧客目線でのリサーチ方法や考え方をもっと知りたいという方は、そういった記事もご用意していますので、必要に応じてぜひご覧ください。
