人を集めるのではなく「顧客」を集めるのが集客

税理士・弁護士・司法書士など、士業として独立すると、必ず向き合うことになるのが「集客」です。事務所の規模の大小にかかわらず、顧客がいなければ事務所は続けられません。集客は士業にとって永遠のテーマかもしれません。

そんな集客ですが「とにかく人をたくさん集めればいい」と考えてしまう方も少なくありません。もちろん依頼を増やすこと自体は重要なことです。ですが、ここでポイントになるのが、単純に人を集めることではなく、顧客を集めることが集客ということです。

今回は「人を集めることと顧客を集めることは何が違うのか」そして、「人ではなく顧客を集めるべき理由」を3つに分けてご紹介します。


1. 顧客はあなたの価値をちゃんと理解してくれる

顧客とは、辞書的には「依頼してくる人、またはその見込みのある人」を指します。では、なぜ顧客は依頼してくれるのでしょうか。それは、あなたの専門性やサービスの価値を理解し、納得してくれたから依頼してくれるのです。当たり前のことでは?と思うかもしれませんが、士業のマーケティングではここが重要です。

その理由は、あなたの価値とは別の理由で依頼する人だと、トラブルに巻き込まれる確率が高いからです。例えば

  • 自分本位な問題を抱え、他の事務所で見てもらえない。問題解決してくれるなら誰でもいい。
  • 値切り交渉が多く、依頼してからは無償でサービスの追加ばかり求めてくる。
  • 「お金を払えば何でもしても許される」と誤解している。

などのトラブルです。こうした相手に振り回されてしまうと、先生の力は発揮できませんし、何より疲れてしまいますよね。

ですので、顧客とは単純に依頼をくれる人ではなく、あなたの価値をしっかり理解したうえで依頼してくれる人と考える方が良いでしょう。ここを理解して顧客を集めることで、事務所の成長と安定につながるのです。


2. 「出来ること」には限りがある

自分の価値を理解してくれる人だけ集めたい一方で、開業したばかりの頃や閑散期など人の動きが少ない時期は、「まずはとにかく人を集めなきゃ」と不安になる方も多いでしょう。
しかし、税理士・弁護士・司法書士といった士業には、もともと社会的に確かなニーズがあります。正しい集客方法を実践を重ねていけば、無理に安売りしなくてもある程度の顧客は集まります。

大事なのはその後です。どの事務所にも対応できる仕事量には限界があるため、無理に人をかき集めて仕事量が増加してくると、次のようなリスクが出てきます。

  • いろんな要望に対応しようとして業務が複雑化していく。
  • 一人に割ける時間が減って、サービスや対応の質が下がる
  • 忙しすぎて、サービス改善や勉強したくても手が回らなくなる

こうなると、信頼して依頼してくれる顧客への対応に十分な力を注げなくなってしまい、顧客離れに繋がりがちです。最終的には、働いても売り上げが上がらないという悪い流れから抜け出せなくなってしまうのです。


だからこそ、サービスの対象をある程度絞り、満足度を高めることが大切です。満足度の高いサービスは手間がかかりますが、そのぶん適切な単価でも顧客は納得してくださいます。結果として「少ない数でも質の高い仕事」で経営を安定させることができるのです。


3. 「人集め」と「顧客集め」ではやり方が違う

人を集める方法は、割引やキャンペーンのように「目を引くこと」で広く注目を集めるやり方です。もちろん悪くはありませんが、その場合に集まるのは「興味本位の人」や「安さ重視の人」が中心になりがちです。

一方で士業に必要なのは「顧客を集める戦略」です。
例えば相続問題で悩むご家族や、契約トラブルを抱える経営者は「時間や費用がかかっても、信頼できる専門家にお願いしたい」と考えています。こうした方に響くのは「丁寧さ」や「確実な対応力」であって、派手なキャッチコピーではありません。

だからこそ、「誰に、どんな価値を届けたいのか」を明確にし、それを正しく伝えることが欠かせないのです。


まとめ 安定した経営のために

「人が集まらない」と焦ってしまうと、「安くてもいいから依頼を増やそう」と考えてしまいがちです。

安い仕事ばかりに追われるか、それとも信頼できる顧客と適正な単価で長くお付き合いしていけるか。事務所経営の安定を左右するのはここにあります。

努力を重ねて士業として独立された先生だからこそ、自信を持って「人」ではなく「顧客」を集めていただきたいと思います。
そうすれば、先生にとっても、顧客にとっても、安心できる長いお付き合いができるはずです。

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